HARISO

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金継ぎするように設計する

仙台市の奥州街道に沿いに建つ明治中期から残る旧針惣旅館の改修である。1組限定宿・レストラン・お菓子屋・コミュニティスペースなどの複合的な用途として再生する計画である。建物は市の景観重要建造物に指定され、空襲や震災のあった仙台市の中で現存する数少ない歴史的にも貴重な建築物である。そこで既存建物の基本的な外観や意匠は活かしながら、金継ぎをしていくように設計をすることを考えた。

調査を進めていくと、旅館特有の増改築が繰り返されており、建物の中心部が暗く、法律的・構造的・雨仕舞いも不健全な状態になっていることが分かった。そこでまず、減築する場所を決めた。街道沿いに関しては、道幅が狭い割に、車の交通量が多かったので、ファサードに人の居場所を作るために、店蔵の既存アルミサッシを取り、セットバックさせて木製建具を入れ、閉じられていた店蔵を開くことにした。その扉には既存の屋根で使われていた銅板を酸化処理して美しい模様を出して転用している。北側と宿周りに増築されていた築年数不明なトイレ、お風呂、廊下を減築し適法化を計るとともに、暗くなっていた客室に柔らかい光が入るようにし、新しくつくる宿の動線を確保することにした。また今回手を入れなかった2階、土蔵に関しては将来的な拡張の余白として残すことにした。

内部や家具は、改修箇所を既存状態に馴染ませるのではなく、改修されたということがわかるようにし、それを「金継ぎ」と呼んで設計していた。今回の改修で変えた場所、足した場所、引いた場所、補修した場所が記録として残り、かつ一体的に見えるような設計を心がけた。例えば、既存の塗り壁にはアスベストが含まれていたため、掻き落とす必要があったが、残った土壁はそのまま仕上げとし、土壁にヒビがあればそのヒビに文字通り金のパテを入れ込んでいる。新しく加えた操作が同化されすぎず、かつ現代という時間を織り込んだ新しい全体をどのようにしたら作ることができるかを考えていた。

それは、例えばこの建築が50年後改修するときに50年前に何が行われたかが分かるという意味でも重要な意味を持つと考えた。

Location :Miyagi Japan

Principle use : hotel, restaurant, shop

Design : Motosuke Mandai / Tadahiro Machida / Yuka Nakazaki (Mandai Architects)

Structure Engineering : Historical Architecture research institute

Facility design : Reiwa Setsubi Sekkei

Landscape design : eiko tomura landscape architects 

Client : HARISO

Construction : Abe Construction Co .,ltd

Floor area : 444 sq.m

Site area : 1182 sq.m

Structure : Wood

Completion : 2024.9