岬の家

岬の家

三浦半島の先端の岬に建つ住宅の計画。舗装されていない、森の小道を進み、強い海風に吹きつけられて斜めに生えている木々の空間を抜けると、突然目の前に太平洋と富士山が現れた。

海沿いの崖の上にある敷地には築75年程のL字平面の木造平屋が建っていた。終戦後日本に来たアメリカ人写真家が設計した住宅らしい。内装は真壁や竿縁天井でできているが、陸屋根で暖炉があるという不思議な建物。腐食が進み、ほぼ廃屋のようになっていたが、再建築ができない場所であったことと、当時の可愛らしい内装が残っていたことから、既存の躯体や内装を残しながら設計することにした。

既存建築の真壁による木造の軸組を増幅させて、木造の森のような環境から海に向かう建築の姿を考えた。朝起きて、木々の間を進むと海が見えてくるような空間である。

まず、海側に新しく細長い建築を増築し、古い建物と中庭を強い海風から守るように配置した。増築部分には現代の生活を支える、水回り・玄関・サンルームなどを設ける。この新しい増築によって、建物全体は雁行する形で海に向かって伸びていくようなプランに変わり、周辺の森と建築によって囲まれた大きな中庭が生まれる。

次に長押より上の欄間部分の壁を壊していった。既存建物にはほとんど軒がなく、外壁が傷んでいたので、軒を伸ばし、その下に開口をつくる。通常木造の耐震壁は梁まで達するように作るが、この建物では長押部分までを耐震壁として、そこから上は片持ちの柱によって屋根を支えている。平屋の陸屋根だからこそできる空間の透明感や開放感をつくり出したいと考えた。

木造は鉄やコンクリートに比べ、「弱い」構造である。その弱さ故に環境の影響を受けやすく、場所性が反映される構造であるとも言える。海沿いという厳しい環境で弱い構造でつくることで、ある種過剰に反復されるこの木軸組は、人間がこの場所で自然に抗い強く生きるという意思なのである。

Cape House

Location :Kanagawa Japan

Principle use : residence

Design : Motosuke Mandai / Taeko Abe (Mandai Architects)

Structure Engineering : Kenichi Inoue Structural Engineers

Construction : Toita Koumuten Co.,LTD.

Floor area : 98.54 sq.m

Site area : 778 sq.m

Structure : Wood

Completion : 2021.7